鬼瓦の製造工程
特注品は鬼師が一つ一つ手作り製作しています。
瓦の種類によって製作工程も異なりますが、ここでは一般的な鬼面鬼瓦の製造工程をご紹介します。
鬼師の道具
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道具も色々 |
鬼瓦の製作に使われる道具は様々で、金ベラ、竹べら、かきべら、タタキ、カキヤブリ、カンナ等々、何種類もの道具を使っています。時には自分の使いやすいように道具を加工をしたり、一から自作する場合もあります。職人一人ひとり使う道具の種類も様々。自身の作業にしっくりくる道具を見つけ出し使用します。これらの道具を巧みに使い分け、大小様々な鬼瓦や飾り瓦を作り出していくのです。 |
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製造工程
図面を書く |
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焼き縮みを考慮して図面製作。 |
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型紙製作 |
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板荒地 |
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型紙に合わせて型取り。 |
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土台作り |
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板荒地を貼り合わせて、土台を作っていきます。 |
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土台作り |
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裏面。これをひっくり返してベースとなる板荒地を取り付け |
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顔成形 |
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粘土を盛って顔の荒を作っていきます。 |
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顔成形 |
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粘土を盛ったり、削ったり。 |
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手作業で少しづつ成形。 |
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徐々に顔が出来てきました。 |
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顔成形 |
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土台部が先に乾燥してしまわないよう、覆いをしています。 |
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ある程度の硬さになったら磨き上げ仕上げに入ります。 |
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顔は、古瓦の復元の場合と創作する場合とあります。 |
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目を開ける |
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最終工程は目を開ける作業。 |
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鬼の面の完成 |
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屋根から見下ろすことを考慮して位置を決めていきます。 |
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雲付の足製作 |
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続いて、棟を跨ぐ足の製作。 |
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土台作り |
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同様に板荒地を貼り合わせて箱を作ります。 |
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型紙に合わせて成形。 |
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雲を彫る作業。 |
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磨き上げ完成。 |
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自然乾燥 |
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ここから数週間かけて乾燥。 |
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乾燥 |
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乾燥の仕上げは窯の余熱で。 |
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窯積み |
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いよいよ窯積み。 |
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窯積み |
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大きいものはフォークリフトで積み込むことも。 |
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焼成~いぶし |
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焼成は丸一日、最高温度は約1000度になります。 |
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窯出し |
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一日以上冷却期間を経てようやく窯出しとなります。 |
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窯出し |
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高温焼成のため、割れたりしていないか緊張の瞬間。 |
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完成 |
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完成。綺麗ないぶし銀に仕上がりました。 |
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いぶし・燻化
【淡路島の恩恵、瓦になるための土】
燻化(くんか)とは、表面に炭素膜を形成させるための“いぶす”工程ですが、淡路の粘土は炭素膜が最も良い状態に形成される温度とその基盤である素地を最高の硬度に焼結させる温度が完全に一致しているのです。つまり、いぶしの美しさと瓦としての強さが、どちらも全く妥協することなく両立しているのです。
天然素材でこれはまさに奇跡的な事。そして、このように優れた特徴を備えた粘土が豊富に埋蔵されている地域は淡路をおいて他にはないのです。
【いぶし瓦の伝統技法】
燻化では、窯の中に閉じ込められた炭化水素が熱によって分解され、炭素だけが瓦表面を覆って薄膜を形成します。この炭化水素を窯に発生させるために昔は松葉などをくべていましたが、今ではブタンガスを使用しています。この方法は現代では「CVD法」と呼ばれるもので、半導体生産現場で近年活用されはじめたいわば先端ハイテク技術。ナノテクノロジーにあたるものです。
電子顕微鏡で見るといぶし瓦の表面には、炭素が規則的に積層していることがわかります。この整然としたナノサイズの配列が光を乱反射させ、美しい質感を生み出しているのです。
古くより職人が試行錯誤を繰り返し辿り着いたいぶし瓦の製法。経験から編み出した伝統の技は、くしくも最先端テクノロジーの域に達していたのです。
【長年の歳月を耐え抜くいぶし瓦の耐性】
表面を炭素膜が覆ういぶし瓦。炭素材料は、科学的変化に対する耐久性、熱に対する安定性があるため、太陽光や風雨に対して耐久性があります。
放射光で解析したいぶし瓦の経年実験でも、その特性が証明されています。また、重圧に対する強度試験もJIS規格をはるかに上回る結果でクリア。凍害試験においても安心できる強度が実証されるなど、いぶし瓦の耐性が科学の手で次々と明らかになってきています。
【作り手の魂がいぶし銀となる】
淡路瓦は粘土をブレンドし、入念に混練したのち、数日寝かせ、真空土練機で押し出し、予備成形し、プレス、または手作り成形します。この後、乾燥した生地に微粒子の粘土を水に溶かした吐け土を塗布。これによって、よりなめらかに美しく、耐候性に優れた瓦に仕上がるのです。他に類を見ないいぶし瓦の品質はこのような淡路独特の製造法によって支えられています。近年そのクオリティは国際会議等で外国人からも高い評価を獲得。改めてその製法が注目されています。
淡路瓦工業組合「淡路瓦設計・施工ガイドブック」より